西垣充様プロフィール
1996年ミャンマーに赴任、98年から起業。19年間ミャンマーに根を張り、日系企業の進出支援、旅行手配や取材コーディネート、視覚障害者支援等を行っている。幅広くミャンマーの発展に貢献し、ミャンマー関連のセミナーに登壇することも数多い。ミャンマーを最も知る日本人のひとり。
ミャンマーで人材紹介・派遣、進出コンサルティング、旅行・取材コーディネートなどの事業を行っているJ-SAT Consulting Co., Ltd. の代表取締役。
IDFC準備のために夏にヤンゴンに渡航した際、ミャンマーに詳しい西垣充様にインタビューをさせていただきました!
ミャンマーってどんな国?
なぜずっとミャンマーでお仕事をしているの?
日本の学生が今ミャンマーに行く意義は?
様々な質問を投げさせていただきました。
Q. ミャンマーでビジネスをすることになったきっかけはなんでしょうか?
就職活動を終えてから行きたいと思いながら行けずじまいだった東南アジアへ旅行しました。
最初ベトナムに行ったのですが、当時1994年からすでに活気がありました。そのベトナムで日本人の方にお会いした時、「ベトナムはすでに僕みたいな人がいるんだからミャンマーの方が面白いよ!」と言われたんです。
それで、ミャンマーへ行きました。バンコクから飛行機でたった1時間くらいしか離れていないのに、なぜこんなにも違うのだろうとショックを受けました。
なんとかしないと!と思ったんです。そこからでした。
Q. 不安はなかったのでしょうか?
それよりも使命感の方が強かったです。
今もミャンマーをもっとええようにしないとって勝手に思っています 笑
Q. J-SATが大切にされていることは何でしょうか?
我が社J-SATは、「社会にインパクトを与える先駆者となる」、また「みんなが成長できて楽しいを目指すこと」を大切にしています。
後付けではありますが、J-SATのSは「成長」できて、A「安心」できて、T「楽しい」の3つです。
写真: J-SATの職場
—確かに社員が安心して生活できることって大切ですよね。
とても大切なことです。
ビジネスは利潤を追求する点についてネガティブなイメージもつきまといますが決して悪いことではありません。社員がきちんと生計を立てられる安心を与えることができます。
多くのNGOで見られる限界は助けるところを的にしていること。この仕組みだけでは被支援者が自立することが難しいと感じています。
例えば、視覚障害者が働くマッサージ店「ゲンキー」を始める前。彼らはNGOからマッサージ技術を学んでいましたが、そこで支援は終わってしまっていました。
彼らが本当に望んでいることは何でしょう。彼らは技術を学ぶことが目的ではなく、技術を使いお金をきちんと稼いで独立できることなのではないでしょうか。
自立支援たるものは、被支援者が生活費を稼げるようになること。
したがって、そこに利潤を生み出す仕組みを作らなければならないのです。
視覚障害者マッサージゲンキーは現在ビジネスとして成り立っていますし、ゴール(モデル)を見せるとわかりやすく、マッサージをやりたい視覚障害者は急増しています。
ただ、ここで大事なのはビジネスが手段であることを理解していること。
日本の学生で社会起業家になりたい!という人が増えているようですが、社会起業家になることが目的化してしまっているように感じます。
ビジネスは仕組みであって、その前に取り組む社会課題とお金を恒常的に生み出す仕組みを見つけなければいけません。
困ってる先に商売があるのだから、その点をまず明確にするべきです。
Q. 西垣さんは大学生や新卒のミャンマー人とも長年関わっていらっしゃいますが、彼らにどんなイメージを持たれていますか?
起業したい!という人たちが多いですね。
―IDFCは主にミャンマーの大学生と活動をしているのですが、私たちも彼らから起業したいという声をよく聞きます。
私たちはJ-SATとして、ミャンマー全域で17大学、ヤンゴン内で8大学にて、キャリアセミナーを開催しています。
「起業したい人?」と質問すると、
たくさんの手が挙がるんです。
「じゃあ何年後起業しますか?」と聞くと、
「3年後!」とか返ってきます。
とあるアンケート調査で、ミャンマー人の98%が3年先までしか考えていないことが判明したことがあります。
起業したいと言う学生は多いのですが、その道しか知らないからなんです。
かといって、起業の仕方、起業した先のことはこれと言って考えられていない。
私たちのキャリアセミナーでは、3年よりももう少し先の10年後のことも見据えてキャリアを考える機会などを作っています。
Q. ミャンマーの教育や就職に関わる社会問題はあるのでしょうか?
ミャンマーでは大学進学率わずか10%代であり、一学年あたり20万人程しかいません。さらに、その大学卒ミャンマー人でも就職先がなかなか決まりません。
—じゃあそれ以外はどうなってるのでしょう?
ミャンマー国内では仕事が十分ではないため、海外に出稼ぎにいくことが多くなっています。さらに、
ミャンマーでは人身売買が深刻な問題となっています。
それも、売春目的で特に被害に遭う女性だけではなく、男性もかなり売られています。
ここヤンゴンでも起きています。
最近聞いた話では、
田舎から都内へ出てきた彼らは仕事がなかなか見つからない。
そして彼らは「タイの工場に行け。いい賃金で働けるぞ」と言われ国境を渡るんです。
しかし、行ってみたら法定に満たさない厳しい環境で働かされる。
しばらくして今度は「船に乗ったらもっといい環境で働けるぞ」と言われて。
でもそのあと乗せられるのはインドネシアの闇漁船。これに乗ってしまうと人々はもちろん近づかないし、インドネシアは島がいっぱいあるから気付かれない。
船にミャンマー人を送り込む旅、送り出し者は一人当たり日本円で約9000円もらうことができる。
ミャンマー人たちは約4時間睡眠で約20時間働かされる。麻薬も入れられるものだから、意識もないまま体がボロボロになるまで働かされる。
歯向かってリーダーになるミャンマー人は捨てられる。
このことは、最近ようやく世に明らかになった事実です。
インドネシア政府の調べによると、今年になって無人島からミャンマー人やカンボジア人が今年だけで8000人ほど出てきたそうです。
人身売買が問題となっていることを知っているミャンマーの若者いますが、ここまでひどいことを知っていた人は少なかったようです。
Q. 日本の学生が、ミャンマーへ今行く意義はなんでしょうか?
「ミャンマーはこれからだ」「今こそミャンマーが熱い」なんてポジティブな報道がよくされていますが、様々な問題が山積しています。
メディアで取り上げられているミャンマーはほんの一片でしかありません。
ビジネスをやるにも何をやるにも、まずはどんな問題があるのか、現実を見ることが大切です。
私は学生時代、カナダへ行きました。
バンクーバーで、内戦から逃れてきたラオス人やソマリア人、また、天安門から逃げてきた中国人たちに出会いました。
日本でただ学生生活を送っていただけでは知ることができなかった世界でした。
—なるほど、そしたらカナダは西垣さんの人生において一つの大きなチェンジをもたらした経験だったのでしょうか?
そうですね。カナダに行ってなかったらミャンマーにも来ていませんでしたね。
やっぱり学生のうちに海外に出た方がいい!
異国の人たちの価値観に触れることは、その後の自分の判断材料になり肉になる。
Q. 最後に、西垣さんにとってミャンマーとはどんな国でしょうか?
自分から何かしに行くというより、やりなさいと言われているような感覚です。僕に与えられた場所、「生きる主戦場」でしょうか。
長くいるとなぜそんなに住んでらっしゃるんですか?ってよく聞かれます。
でも、「そんなの知りません」というのが正直なところです。
用はなかったら当地に留まるのは難しいと思います。
今ミャンマーにいるのは、いろんなご縁があってこそです。
ご縁が導いてくれた先がミャンマーだったというだけです。
とても貴重なお話ありがとうございました!
この記事が、皆さんがミャンマーへ行くご縁になることを願って…